第1部:馬術と競馬 2018.03.12 「馬術×競馬」を語ろうナイト in 大手町 @サンケイプラザ大ホール

f:id:karasi-gj:20180411131411j:plainrace.sanspo.com

19時開始ということで、いつもより1時間早く出社して普段の定時より早く帰る技を使い、標題のイベントに行ってきた。
仕事が内勤になってからもう10年近く経ち、地下鉄もあまり使わなくなっていたので、大手町ダンジョンを迷いに迷ってギリギリの到着になってしまった。永田町と大手町は苦手。500~1,000人規模の会場がびっしり埋まっていてびっくりした(600人とのこと。抽選落ちもあったみたい)。

無理して言った甲斐あって面白い話がたくさんあったので以下ざっくりメモ。
吉田勝己ノーザンファームの強さのベースが垣間見えたのと、小牧選手が東京オリンピックより先を目標に据える馬術というスポーツの競技人生設計、3者から語られる言葉の端々から感じられる、人馬の安全が最優先という思想が印象に残った。あと、吉田勝己が「馬に乗るのは楽しい」というのを何度も強調していたところ。 第2部:ライダー競演 は別エントリーにします。
トークショーがベースなので、「本人の口からそういうことは言っていないが司会が振った話に同意・肯定したもの」が含まれていたり、一部補ったり省略したり前後入れ替えたりしています。ご了承ください。

司会:清水久嗣アナ、北野あづさ(日本馬術連盟

第1部:馬術と競馬

ゲスト:吉田勝己ノーザンファーム代表・慶應義塾大学馬術部OB)、池添学JRA調教師・明治大学馬術部OB)、小牧加也太(日本馬術連盟・北総乗馬クラブ・馬術アンバサダーライダー)

乗馬・馬術の技術が競走馬の育成・調教に活かされているという話を、ゲスト自身の経験を交えて語る回。司会の清水アナは、大学入学前から将来競馬アナウンサーになることを決めていて、浪人時代に乗馬クラブへ通っていたとのこと。

吉田勝己ノーザンファーム代表・慶應義塾大学馬術部OB)

吉田:有馬記念の頃にこのイベントの話をもらった。普段こういうイベントでの話はあまり受けないが乗馬の話なので受けた。100人くらいの聴衆を想定していたが、こんなにたくさんの人が来ていて驚いた。すばらしいことだと思う。

吉田:千葉の冨里の牧場で生まれて育った。小学生の頃から毎朝、馬の寝藁上げをやらされていて(父・善哉から)「大人になったらお前は馬をやるんだぞ」と言われて育った。スパルタなオヤジだった。慶應高校、慶應大学で7年間馬術部。今も障害を飛んでいる。馬術部は1日も休まなかった。馬も好きだったが学生馬術は厳しくシゴかれる馬術で楽しい馬術とは少し違う。勝負に勝つとはどういうことか、馬を上手くするにはどうすればよいかというのを7年間実地で学んだ。
(学生馬術は厳しいというくだりで、ゲストも司会もめっちゃ同意している雰囲気。馬術大会で失敗した選手とか見ていると厳しいんだろうなと思う場面は確かにある)

-馬術部での経験はその後の競走馬育成の仕事に役立っている?
吉田:そう思います。牧場でも日々色々と大変ことが起こるが、当時の厳しさに比べれば今のことは大したことないと思える。
(一同心の中で「そういうこと聞いてるんじゃねえんだよ!」)

[吉田勝己の障害練習する映像を流す]
吉田:ここ2,3年は北海道にいるときは毎日乗っている。
-スタッフに止められない?
吉田:結構怪我してる。骨折することもあるが、もうこの年になったら好きなことをしようと。危ないので障害の高さは1m20cmまでにしている。
小牧:1m20cmというのは高いですね。

[吉田勝己出場の全日本障害馬術大会の映像]
吉田:いや、お見せできるようなあれじゃないから…。まわりが面白がって「出ろ出ろ」ってうるさい。こういう大きな大会は25年ぶりで、3年前に本気で出ようとしていたのが骨折で出られなかったのでこの大会はとても楽しみにしていた。
吉田:馬乗りは年齢関係ありませんのでみなさんもぜひ始めてください。

-馬術の技術が馴致や育成に活かされている?
吉田:学生時代馬術部で乗った後、卒業して牧場へ行ってみたらびっくりするくらい下手な人が調教に乗っていた。いくらなんでもこれでは馬がかわいそう。乗馬よりも高い競走馬なのにこんなひどい乗り手でお客様にも失礼だし馬もかわいそう。せっかくの良い馬なのに。これはなんとか改善しなきゃいけない。それでノーザンホースパークを作った。馬術の良い選手を呼んできたり、教える人を呼んできたり。とにかく上達してもらわないと。馬を壊されたらたまらない。今は観光地にもなっているが、ノーザンホースパークの第一の目的は育成スタッフの技術向上。

[ノーザンホースパークのスタッフの技術研修映像]
(大きな馬術大会で好成績を残した選手や池添師の先輩の姿が映ったらしく声が上がる)
吉田:未経験者は1年間の研修を経て本採用になってから競走馬の調教に乗れるようになる。

-雪の中での乗馬研修大変そう…。
吉田:大変大変と言うけど馬に乗るというのは楽しいことですから。こんなに朝から晩まで馬に乗せてくれるっていうのは普通の乗馬クラブじゃありえない。

[空港牧場の坂路の映像]
吉田:坂路は馬の調教にとても有効。上に行ったら馬が勝手に止まってくれるから下手なスタッフでも乗れる。自然とトモ脚が使えるようになる。トモ脚が使えるのは乗馬でも競馬でも大事なこと。

-池添師は大学を出てすぐノーザンファームに入ったがこんな感じ?
池添:乗馬の馬しか乗ったことはなかったが、馬術部出身だということで最初からいきなり競走馬の調教に乗せられた。最初の方は馬が暴れるので落ちないようにするのと、競走馬のパワーに苦労した。
池添:当時の吉田勝己社長の存在はカリスマ。毎朝坂路調教を見に来るので、失敗しないようしっかり綺麗に乗ってアピールしていた。

-アピールには気づいていましたか?
吉田:人を見てもしょうがないから馬が…(よく聞き取れず)。朝は必ず坂路調教を見に行くようにしている。
吉田:乗る人の技術の進歩が、日本の競馬が世界に通用するようになった大きな一因。乗る技術がなければ良い馬は作れない。

池添学JRA調教師・明治大学馬術部OB)

-大学時代は明大馬術部で主将として活躍していました。父も兄も騎手をやった競馬一家。最初から競馬の世界に行かなかった理由は?
池添:兄の背中を追って兄と同じようなことをしてきた。自分も当たり前のように騎手になると思っていたが思いのほか体が大きくなってしまい、障害の元ジョッキーで現役時減量に苦労した父の猛反対を受けた。そのとき馬術も楽しかったので馬術部のある明治大学に入った。

-明治大学馬術部は当時とても強くて黄金期だった。池添師はそこの主将だった。
-馬術を経て兄や父と同じ競馬界に入ったが、競走馬の調教に馬術の技術を活かしていると。
池添:一番の目的はケガを防ぐこと。馬はとても大切な商品。人馬のケガを防ぐために馬術のアプローチを用いている。基礎トレーニングが特に大事。

[池添師騎乗のトレセンでの調教映像]
池添:乗っているのは背腰が弱い3歳馬で、頭を上げた良くないフォームで走る。競走を経験してきて我が強くなって立ち上がったりするようになってきたので自分が乗って矯正することにした。映像は乗って3日目のもの。ハミの反抗を除くための基礎的トレーニング。わずかな反抗の徴候を感じ取り、馬が実際に反抗する前に技術で取り除き、馬を納得させる。人間に対して譲るということを何度も繰り返しやらせて覚えさせる。短距離ダートを使っていてカラダが固くなりやすい馬なので筋肉をしっかりほぐすこともしている。

-(映像で)馬が駆け足を出そうとして一度止められたのは?
池添:指示とは違う手前で駆けようとしたのでストップをかけた。指示と違うことをしようとしたら止めて1からやり直す。少しでも反抗したら最初からやり直すことで約束事を教えていく。人間の指示に従って動けるようにしていく。

-人と馬のコンタクトが取れているか見た目で判断する方法はあるか?
池添:トップラインを見る。頭から背中・腰にかけてしっかり丸みを帯びた状態になっているかどうか。

池添:競馬を経験した馬は前に前にどんどん走りたがるようになっていくので、人間が走らせたいペースに合わせられるように教えていく。それが出来ないと思ったような調教ができず、調教メニューの選択肢が限られてしまう。

[映像の場面が変わる ]
池添:広い馬場でもコントロールできるように教えているところ。映像は500mの調教馬場で、栗東の追い切りコースの一番内側のところ。栗東でもこの馬場を活用する厩舎が増えてきている。一昔前はコントロールの利かない馬がこの馬場でグルグル回っていたが、今はそういう馬がここに入ってくると皆から煙たがられる。今は馬の口向きを整えるために使われることが増えてきた馬場。口向きを気にする調教師・関係者が増えてきている。馬術的な基礎トレーニングを取り入れる調教師も多くなった。ただ馬は1日では変わるわけではないので積み重ねが大事。

-速く走ることが競走馬の命題だが、人間に従順になりすぎて勝てなくなることはないのか?
池添:そういうこともあると思う。これをすれば馬が勝てるという正解があるわけではない。馬術的な基礎トレーニングをしたから馬が勝つかというとそういうわけでもない。自分は馬が怪我をしないように、人馬の安全のためにこういうトレーニングを重視している。

[CWコース3頭併せの映像]
池添:真ん中の2番手が翌週デビューの新馬で、外の前に古馬を誘導役として置いている。折り合い重視で追い切っている映像。追い切りも失敗することがある。失敗すると次の追い切りに向かうときに馬の精神が不安定になったりする。追い切りも丁寧に丁寧にやる必要がある。

-馬術部出身の調教師が増えている?
池添:私の大学の先輩で言うと関東では久保田先生、高柳先生。関西ではやはり藤原先生がカリスマ的な感じで。藤原厩舎はスタッフにも馬術部出身者が多い。自分も難しい馬がいたら藤原厩舎のスタッフにアドバイスをもらうことがある。
池添:馬術部出身のスタッフが馬とよくコンタクトを取れているのを見て、馬術の方法を取り入れようとする厩舎が増えている。馬術の方法を取り入れようとする流れが来ている。

-調教の技術があがっていると実感することはあるか?
吉田:すごく上がっていると思う。

小牧加也太(日本馬術連盟・北総乗馬クラブ・馬術アンバサダーライダー。めっちゃ緊張してる)

小牧:父が騎手の小牧太園田競馬場内の宿舎で生まれ育ったが、馬は危ない生き物で近づいたり触ったりしてはいけないと教わっていた。当時の僕は素直だったので言いつけをしっかり守り、馬には近寄らなかった。
小牧:馬との関わりは小学校6年のときから。ワンダースピードの引退レースを競馬場に見に行った(2010年名古屋グランプリ名古屋競馬場ワンダースピード小牧太が優勝)。父が「来るか」というのでついて行った。そのレースを見て「やってみたい」と思った。
小牧:最初はジョッキーになりたかった。競馬学校の試験は2回受け、2回目の1次試験を通ったが体重が落ちなかった。父も「今の段階で減量に苦労しているようなら厳しい」と。それで断念した。
小牧:馬という生き物にどっぷりハマっていて、騎手になれないのは薄々わかっていたがなかなか受け入れられなかった。2回目の試験でようやく受け入れられた。馬術も楽しいので馬術の道を選んだ。

-障害馬術は一言で言うとどんな種目?
小牧:アクロバティック。馬術3種目(馬場・総合・障害)の内一番、あ、総合もアクロバティックだ・・・w 一目見てパッとわき上がることができる華のある競技。

[小牧選手の馬術大会の映像](勝巳より体が安定している。障害も高い。) 小牧:これは1m40cm~1m50cmの障害。障害を前に躊躇する馬もいれば自分から積極的に飛びついていく馬もいる。

-競技中気をつけていることは?
小牧:この馬は積極的に乗り手を連れていってくれる馬だが、乗り手にミスがあるとカバーしきれない部分がある。失敗しないように。
小牧:障害物を飛ぶ順番は人間が覚える。競技の前に乗り手が下見をして確認する。馬はコースを知らない。乗り手の少しの体重移動だけで、馬があたかも初めからコースを知っているかのように見せる。
-(映像で落下なく最後まで飛び切ったところで)うまくいったときの気持ちは?
小牧:この走行自体はそんなに上手くいっていない。ただ落下なしで減点なく来れて良かった。決勝に向けてまずはゴールできてよかった。
小牧:競馬ほど速いスピ-ドでは走っていない。この馬は人のバランスに敏感に反応する馬。自分が乗って欲しくないバランスで乗られると馬が逃げるので、馬が好むバランスを見つけて乗る。
小牧:愛馬ガルーはちょうど1年くらい乗っている。

吉田:(映像の感想として)すばらしい。
池添:すごい。自分は障害馬術が苦手で馬場馬術が得意だった。恐がりなので。馬は障害を飛ぶ動物だとは思っていなかった。
-競走馬のあんな速いのに乗れるのなら障害は怖くなさそうだけど…
池添:そういうものでもない。

小牧:所属する北総乗馬クラブもJRAの競走馬を預かっていて、自分も競走馬に乗る機会がある。毎日午前中は競走馬に乗っている。競走馬はパワーがすごい。速い時計を出すわけではないが、競走馬に乗っていると風を感じて気持ちいい。恐怖はない。
小牧:北総乗馬クラブでは朝7時に馬を放牧へ出すのに始まり、生産~育成~乗馬までいろいろ、馬に関わることすべてやる。8~11時くらいまで競走馬に乗る。12時にご飯。13時~16時は自分の担当する乗馬に乗って練習。その合間にクラブで乗馬を教えたりもしている。

小牧:華原朋美さんの所有馬クラシックは自分ではなく師匠が乗っている。父のキャリーズサンという種牡馬が北総乗馬クラブにいて、クラシックはこの乗馬クラブで生まれた。クラシックに鞍付けをして初めて乗ったのが自分。その馬に華原さんが乗ってテレビに出ているというのは嬉しいこと。

-JRAの競走馬のトレーニング、障害のトレーニングもしていて、あのオジュウチョウサンも北総乗馬クラブでトレーニングを積んだとか?
小牧:オジュウチョウサンについては自分自身は数回跨がったことがあるくらい。師匠は「この馬は大障害勝つ」と断言していた。(いつの段階の話なんだろう?)

-競馬での障害と馬術の障害の違いは?
JRAの障害競馬用の障害調教もやっているが基本的にはあまり変わらない。飛越の姿勢自体はそんなに変わらない。ただ、ここまで速いのは未知の世界。

池添:馬術競技の結果は日頃から気にしている。競馬も馬術も若い世代が活躍しないと。

-吉田さんエールを送ってあげてください。
吉田:馬は数を乗らないといけない。練習をどう積むかが大事。(客席を指差して)そこに師匠。林忠義さんというすごい先生がいる。(小牧選手はめちゃくちゃ数を乗っているし良い師匠もいるから大丈夫だというニュアンスだと思う)
-それで(そこに師匠いるから小牧選手は)緊張していたのかw

-最後に今後の抱負や勝ちたいレースなどを。
小牧:今年はチャレンジが多い年になるのでひとつひとつ積み重ねていく。東京オリンピックまでにそこまでの技術には達しないので、その先のオリンピックや世界選手権を目標にしている。日の丸を背負って試合に出たいという夢がある。
池添:調教師としてG1の大きな舞台に当たり前のように送り込めるように。娘が来月から乗馬を始める。私も馬術復帰して競技に出たいと思っています。
吉田:勝負は(馬術ではなく)競馬。とにかく世界に向かって日本の馬を見せていかないと。勝たないとだめですね。ずいぶんやっているんですがなかなかね。ドバイとか香港はうまくいくんだけどヨーロッパ行くとだめだとかね。馬の能力はあるので適した馬を選んで。世界はひとつなので、常に外に向かって出て行こうと思います。
-その中でどうしてもこれは勝ちたいというレースは…?
吉田:どうしても勝ちたいのは凱旋門。あれだけ負けているのでどうしても勝ちたい。(無理矢理「凱旋門賞」と言わせた感ある)

-全員のホースマンの夢が詰まっているので是非とも頑張ってほしいですね。

-ありがとうございました。

-(拍手)

2部までの場繋ぎトーク
北野:小牧さんの愛馬、先ほどはガルーって省略して話しましたけどフルネームがすごいんですよ。
北野:ガルーファンデスケンメルスベルグ号。ナントカ地方のガルーっていう意味みたいですけど。
北野:競走馬にいたら?
清水:イヤですね。
清水:シンボリルドルフが言いにくくて、フルで言わないでみんなルドルフと呼んでいたというのを先輩から聞きました。リルでラ行が続く部分。
清水:苦手だったのは小田切さんのパピプペポ。腕の見せ所ですし楽しいんですけれどこれをきっちり言うのは難しい。
(ラリルレロ号、パピプペポ号が登場する見事な架空実況を披露。場内沸く。)
清水:サシスセソラリルレロパピプペポは難しい。
清水:こいういう馬名の親分がカポデテュティカピ。
清水:自分が担当したわけではないが、未勝利戦を勝ったときの実況席で同席していた。担当した先輩はレース前「頼むから勝たないでくれ」と言っていた。
清水:先輩の実況はカポデテュティカピは読めていたが、それに集中するあまり2着も3着もよくわからない実況になっていた。