Hall of fame inductee KARASI lead the field out for the Mosstrooper Steeplechase.

カラジ殿堂入り・ベンディゴ競馬場で凱旋誘導

1998世代(1995年産)最強の呼び声高い*1中山グランドジャンプ3連覇のカラジが2018年5月にオーストラリア競馬の殿堂入りを果たし、7月にはベンディゴ競馬場で元主戦のスコット騎手を背にお披露目の誘導を行った。 彼の名前をハンドルネームとして勝手に拝借している身として(馬の名前を勝手に拝借するな)、とても嬉しい。
とても嬉しいのでカラジについてつらつらと書いてみる。

2005年中山グランドジャンプ

競馬を見るようになったのは2004年からだが、誘われたらときどき府中もしくは南関の競馬場へ行くのと気が向いたら2chの競馬板を眺める程度で本格的には競馬を見ておらず、2005年の中山グランドジャンプを見たのはレースから数か月後にネットでUPされた動画でだった。 Youtubeがない頃だったので、2chの競馬板の動画スレにUPされていたものだと思う。
J-G1をまともに見るのもこのときがたぶん初めてで、長身スコット騎手の激しい風車ムチに応えて首の低いフォームで後続の追撃を凌ぎ切る小さい馬の映像はなかなか強烈なインパクトを僕に残した。馬の小ささと騎手の大きさのバランスがおかしい。

2006年2月ミッティーズハンディキャップ

カラジのレースを直接見たのは翌年の中山グランドジャンプでも前哨戦ペガサスジャンプステークスでもなく、2006年2月のオーストラリアで行われた平地レースだった。大学を半年留年して9月に卒業した僕は、同じく大学を1年留年していた友人と卒業旅行でオーストラリアに来ていた。
シドニーロイヤルランドウィック競馬場にドッグレース場(寂れたナイター開催で、売り上げがどんどん落ちていたその頃の日本の地方競馬の趣があった)、キャンベラの戦争記念館(日本軍関係の展示が多い。友人の趣味)、メルボルンに来てムーニーバレー競馬場フレミントン競馬場(開催なし)、コーフィールド競馬場(スニッツェルが勝ちテイクオーバーターゲットが3着のOakleigh Plateがメインレースだったが「なんかG1やってる」くらいの認識で、凄さが何もわからなかった。もったいない)、オーストラリアンフットボールを回る、趣味に全振りした旅行で大変楽しかった(クリケットも見たかったが競技場周辺まで来たものの試合やってる現場が見つからなかった)。


カラジが登場したのは2006年2月24日のムーニーバレー第4レース、ミッティーズハンデキャップ。 出馬表を眺めているとそこに見覚えがある馬名。 出走馬の中で1頭だけ獲得賞金額のケタが違っていて(中山グランドジャンプ8000万円が効いている)、戦績からも間違いなくあのカラジ。 バンパーレースの存在など知らなかったが、カラジが出走するのと出走馬の斤量がやたら重いこと、距離が長いことから、このレースがジャンプホースのための平地レースだということが推測できた。

カラジは2005年の中山グランドジャンプを勝った後のオーストラリアで4戦良いところなく敗れていてまったく人気していなかったが、今回は主戦スコット騎手への乗り替わり。 パドックにやってきた見覚えのある赤と白のダイヤ柄の勝負服を見てようやく「おお、本当にカラジだ」と実感した。

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カラジとスコット騎手、シンプソン攻馬手
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一番左からスコット騎手の風車ムチで追い込んでくるカラジ
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馬券は単複1ドルずつ。

レースはスコット騎手のあの風車ムチでカラジが猛然と追い込んできて2着。
3着は人気馬だったが1着に穴馬が入って大波乱(馬連配当いくらだったのかは記録が見つからなかった)。これで馬連装流しで大儲けでもしていれば話が綺麗にキマるのだが、残念ながら的中したのは単複1ドルずつ買った内の複勝だけ(旅行も終盤でだいぶ資金が苦しくなっていた)。 もうちょっと攻められなかったかと悔やんだが、カラジがスコット騎手の風車ムチで追い込んでくる直線の10数秒は間違いなくこの楽しい卒業旅行のハイライトだった。 記念の単複はお金に困っていたので速攻で換金した。 もったいないが仕方ない。

中山グランドジャンプ三連覇~引退

その後カラジは3度来日し、中山グランドジャンプ3連覇を成し遂げる(4連覇を狙った4度目の来日中に屈腱炎で引退)。 3連覇を達成した2007中山グランドジャンプのレース後のスタンドの空気は、「すごいものを見た」興奮と祝福が混ざった、初めて味わうたいぷのものだった。文男さん騎乗のトーセンアーチャーが勝った韓国のESPN杯、ウォルシュ騎乗のブラックステアマウンテンが勝った中山グランドジャンプが近いだろうか。

このときにウィナーズサークルでスコット騎手からオーストラリアの競馬イヤーブックにサインをいただき、これは宝物である(マウンティングです)。
珠「オウ。グレイト」(渡したイヤーブックを見て)
あ「アイソーユーアットムーニーバレーラストイヤー 」
あ「プリーズカムバックトゥージャパンアゲンネクストイヤー」
あ「」
みたいなことを言ってみたが通じていたのかはわからない。

カラジのレースは2006中山GJ~2007ペガサスJS~2007中山GJまで見に行ったのだけど2007中山GJの写真が残っていない。 jpgで撮影し、PCでトリミングしたあと上書き保存するという驚愕の写真管理体制だったので仕方ない。
園川りにlunapark様というお方がフォト蔵に素晴らしい写真を残されているのでそちらを見るのが良いと思う。 何枚かは当時うまろだにも上げられていて僕も保存済だったりする。

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2006中山グランドジャンプ優勝時
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2007ペガサスジャンプステークスのパドック。騎手が乗ったら先入れで速攻いなくなってしまった。
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オーストラリア競馬イヤーブックのKarasiページに貰ったサイン。ページが逆…。
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大井競馬場2011サンタアニタウィークのTシャツスプレーアーティストさんに描いてもらう
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描いてもらったTシャツ
↑lunapark様の2007中山グランドジャンプの素晴らしいフォト蔵

カラジの強さ

日付 レース名 距離 タイム 通過順 馬体重
2007/4/14 中山GJ 1 障4250 4:50.4 2-2-2-1 430(-2)
2007/3/24 ペガサスJS 3 障3350 3:44.3 5-5-4-4 432(0)
2006/4/15 中山GJ 1 障4250 4:50.8 4-4-2-1 430(-2)
2006/3/25 ペガサスJS 2 障3350 3:43.5 8-8-6-4 432(0)
2005/4/16 中山GJ 1 障4250 4:50.4 2-2-2-1 430(0)
2005/3/26 ペガサスJS 3 障3350 3:43.4 5-5-4-3 430(0)

カラジはオジュウチョウサンマルカラスカルのような暴力的な強さを見せはしなかったが、年に一度中山グランドジャンプを獲りに行くチームとしての強さ・したたかさが新鮮だった。
ペガサスジャンプステークス→中山グランドジャンプのローテを3年続けたが、3年ともペガサスJSで脚を測る乗り方をし、本番の中山GJでは4角先頭で押し切っている。
走破タイムも馬体重も3年間ほとんど変動がなく、こんなに測ったような調整が異国で可能なのかと今改めて見直しても驚く。
鞍上のポジション取り(特に左右のライン取り)は、スコット騎手の方が中山をホームにしているようにさえ思えた(年2回しか使わない(外回りコースということを考えれば年1回しか使わない)コースなのでホームアドバンテージというものがほとんどないのかも知れない)。 特に3連覇目の2007年中山グランドジャンプでは襷コースで内にラインを取ったカラジが自然にスルスルとポジションを上げ、大生垣後のカーブを曲がったところで簡単に2番手を獲ってしまったのに驚いた。
これがカラジの3連覇の中で僕のお気に入りのレース。 パトロールビデオ公開して欲しい。
年に一度の中山グランドジャンプのゴールから逆算するマスグローヴ厩舎の正確な仕上げ、スコット騎手のポジション取り・ペース配分の正確さ、そしてそれに100%応えるカラジの豊富なスタミナと賢さ、このチーム力と優勝後のハッピーな姿に痺れた。

これからもお元気で

中山グランドジャンプ中山大障害は2007年に行き始めてから毎年通っている。
2017中山グランドジャンプでのオジュウチョウサン石神騎手は2007年のカラジ・スコットを思わせるインベタ省エネのライン取りで思わず唸った。
カラジの存在がなくハンドルネームに拝借していなかったら(馬の名前をハンドルネームに拝借するな)中山グランドジャンプには毎年行っていないかもしれないし、障害競走や飛ぶ人馬にもあまり興味を持たず、障害馬術なんかも追いかけていなかったかもしれない。 せっかくの縁なのでこれからも大切にしたい。
ときどきTwitterでこの馬の名前を検索するとこの馬の話題が上がっていることがあって、その度に少し嬉しい気持ちをもらっている。 次に話題になるのは来年4月にオジュウチョウサンが障害に戻ってきて中山グランドジャンプ4連覇の新記録に挑むときだろうか。

カラジはもう23歳だがベンディゴ競馬場で見せた姿はまだ若々しく元気そうだった。 幸い大切に飼養されているようなので、これからも末永く引退生活を楽しんでいてくれるよう願っている。

マスグローヴ調教師はその後も障害の活躍馬を送り出しており、実現ならなかったが2016年には管理馬Thubiaanを中山グランドジャンプに出走させるプランもあった。そのThubiaanが王者Bashboyに挑んだ2015の豪グランドナショナルは、豪雨で開催が2週延期されている間に平地を叩いて息を作り6.5kgの斤量差を活かしたロングスパートでBashboyをねじ伏せんとするマスグローヴ調教師らしい狙いすました渾身の一鞍であった(半馬身及ばず2着)。めちゃくちゃ熱いレースなので是非見て欲しい。
中山グランドジャンプが国際招待レースではなくなってしまったためマスグローヴ陣営の今後の来日の可能性は低そうだが、もし来ることがあればカラジのときのように賞金8000万円を獲りに来るはずである。

www.racing.com www.youtube.com

主戦騎手のスコットは引退して調教師になっている。インタビューなどでカラジがベストホースだと答えているようだ。
一時期Twitterでフォローされていたことがあったが、半年くらいでリムーブされてしまった。 日本語で意味不明なエアリプばっかしているんだから仕方ないね(しくしく)。

カラジ関連リンク集(抜けがあるので適宜増やす)。

マスグローヴ調教師ロングインタビュー。カラジについても。

スコット元騎手ロングインタビュー。英語に自信ニキ翻訳たのむ。

カラジ殿堂入りを受けてのスコット騎手インタビュー。

マスグローヴ調教師について(マスグローヴ厩舎ホームページ)。

カラジが現在飼養されていると思われる場所。

カラジとマスグローヴ調教師(殿堂入りを受けて)

カラジに騎乗してベンディゴ競馬場で誘導を行うことについてスコット元騎手

ベンディゴ競馬場での誘導の様子。

lunapark様による2007中山グランドジャンプの写真

*1:勝利したG1の総距離:カラジ12,750m、スペシャルウィーク10,000m、グラスワンダー8,800m、エルコンドルパサー6,400m